免疫生物学教室にようこそ!

このページの目的は私たちの研究内容を判りやすく説明することです。ご感想、質問を待っています。


内因性の血管新生阻害タンパク質

 Folkman教授らは、がんができると血管新生促進因子が発現するだけでなく、逆に血管新生を阻害するタンパク質も生成することを見出し、それらを同定しました。1994年に最初に同定されたのはアンジオスタチンangiostatinで、驚くことにプラスミノーゲンの断片でした。次いで、1997年にXVIIIコラーゲンの断片であるエンドスタチンendostatinも見出しました。どちらも血管内皮細胞の増殖や遊走を抑制する活性をもっています。そこで、早急に分子生物学の手法を用いてアンジオスタチンを大量に調製し、さまざまなマウスがんモデルに投与し、効果を検討しました。その結果はセンセーショナルで、95%以上の対象がんに効果を示しました。臓器の種類によらずほぼすべての癌をアンジオスタチンは退縮あるいは消失させたのです。既存の抗がん剤には、効果のあるがんと無効のがんとがあるものが通常なので、ただアンジオスタチンを投与するだけで既成概念を超えた結果が得られ、まさしく“夢の抗癌剤“とアメリカで新聞やニュースの第一面で採りあげられ、社会現象になりました。このような研究結果が、ますます血管新生抑制剤の有用性を裏打ちしました。しかしながら、アンジオスタチンやエンドスタチンは、組換え体医薬品として開発が加速され期待されましたが、分子量の大きなタンパク質であるため、活性をもつコンホメーションを保持したままヒトに有効なタンパク質を大量を調製することが困難なこと、組換え体の品質が安定せずに効果が一定しないことなどから、期待されたほどの成果は得られていないようです。

 

研究室が目指すものは?

 私たちは、血管内皮細胞への作用を中心に、新たな血管新生抑制物質を導き出す研究を行っています。具体的には、アンジオスタチンに関する研究、レスベラトロールに関する研究、血管新生阻害物質の探索、 血管内皮細胞の性質や機能に関する研究に日々取り組んでいます。

大きな話かもしれませんが、血管新生をコントロールし、がんや慢性炎症などの治療に貢献できることを目指しています。どんな分野でも楽なことばかりではありませんが、新たな発見を目指して一歩ずつ進んでいきたいと考えています。

 

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